最近、インテリアショップに足を運ぶたびに驚くことがあります。
「あ、これ提案したいな」と思って値札を見ると、自分がなんとなく記憶していた価格のほぼ倍になっていることが珍しくありません。
「いつか買おう」と憧れていた名作椅子も、今や手が届かないほど遠くへ行ってしまった……。
そんな感覚を抱いている方も多いのではないでしょうか。
例えば、北欧デザインの象徴である「Yチェア(CH24)」。
10年前は仕様により7〜8万円台で見かけることもありましたが、現在は15万円〜(仕様により20万円前後)と、まさに「倍」の感覚です。
なぜ、これほどまでに高級家具の価格は高騰したのか。
その背景と、これからの家具選びで大切な視点について考えてみたいと思います。
【価格高騰の裏側にある要因】
10年前と比較して価格が倍増した背景には、複数の理由が重なっています。
- 世界的な原材料不足と資材高騰:いわゆる「ウッドショック」や輸送費の上昇が直撃しています。良質な天然木やレザーの価格は世界的に上がり続けています。
- 世界経済の成長と日本経済の低迷 : 日本で暮らしていると忘れがちですが、世界経済は右肩上がりが基本です。欧米諸国では物価も賃金も上がり続けており、海外ブランドの多くは「年1〜2回の価格改定」を定期的におこないます。数%の値上げも、10年積み重なれば複利効果でとてつもない金額になります。今の高騰は、いわば「世界標準のインフレ」に日本がようやく直面した結果とも言えます。
- 急激な円安の影響:円安が近年の価格高騰の最大の要因といってもいいでしょう。10年前の為替水準とは世界がガラリと変わってしまいました。
価格高騰のあおりなのか、最近ではセカンドハンドのショップも増えており、二次流通市場が活況のようにも思います。
確かにこれだけ家具が高価になると、「資産価値があるから」、「いざとなったら売ればいい」という言葉が魅力的に響きます。しかし、ここには少し注意が必要です。
リセール価値がつくのは、Minotti、B&B Italia、Cassina等といった「超有名ブランド」の「定番モデル」に限られます。高価であっても、マイナーなブランドや個性が強すぎるデザインは、中古市場では驚くほど値がつかないのが実情です。
またソファのへたり、革や生地のシミ等の汚れ、目立つ傷は査定額を大幅に下げます。
特にペットやタバコの臭いがある場合、買取不可となることも珍しくありません。
有名ブランドの有名モデルで、状態の良いモノであっても手元に残る金額は「購入価格の1〜2割」になれば良い方。
これが現実的なラインです。
「高く売れるから買う」のではなく、あくまで「本当にほしいか、価値がゼロになっても使い続けたいか」という視点が大切なように思います。
ではどう家具を選ぶのがよいのか。
価格が上がったからこそ、私たちはより本質的なモノ選びを求められているように思います。
- 「とりあえず」を卒業する:なんとなくで選ぶには高価になりすぎました。10年、20年後の自分も愛せるか、という視点がこれまで以上に必要です。
- 国産ブランドという選択肢:海外ブランドが遠くなる一方で、カリモクやTime&Style等といった国内ブランドの素晴らしさが際立っているようにも思います。為替の影響を受けにくい国内ブランドから、世界に誇れる品質を見つけ出すのも一つの選択肢です。
輸入家具の価格高騰は、ある意味で「良いものを長く使う」という根本的な事を改めて考え直すきっかけなのかもしれません。
10年前に買っておけば……という後悔よりも、「今の自分にとって、人生を共に歩むに値する一脚は何か」をじっくりと考える。
そんな時間こそが、豊かな暮らしの始まりなのかもしれません。